エピチャン

2011/02/28

東京行ってきた。

3泊4日のノープラン。
相変わらず、出たとこ勝負の行き当たりばったり。

僕は遊びに関しての約束や計画を好まない。
なぜなら、計画を立ててしまうとその全てが想定内のスリルになってしまうから。
仕事で散々計画立ててやってんだから。遊びくらい箍(たが)を外したい。
何が起こるかわからない、どこで誰とめぐり合えるか想像もつかない。
どうせ行くならそんなひと時にしたい。

というわけで起きたこと感じたこと、雑記。

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表参道/青山。

表参道はアウェー。僕の昔からの口癖。
ハイブランドが軒を連ねると、どうしてもその街全体が
画一的なハイカルチャーのための集合施設のように思えてきてげんなりする。

ともあれ、ここにしかないお店も多いので参戦。
気になるメゾンの2011春夏、見てきた。福岡では全然見られない。
今回は、ヨウジヤマモト、マルタンマルジェラ、マークジェイコブス、コムデギャルソン。
ヨウジのストライプ柄に黒墨のパンツが僕好みですごく良かった。今回は断念。
そしてやはりマルジェラは僕の興奮をくすぐる。異様な格好よさがある。
ラフシモンズのオンリーショップが昨年閉店してたのが悔やまれる。

昼にはクアアイナでハンバーガーを食べて、
夜は表参道の QUONS で飲んだ。屋上にソファーのテラス席がある。
(こんなトコロ
表参道のソファー席で、僕たちはまるで自分の部屋のように靴を投げ出してくつろいでは、
向かい席の合コンじみた宴をお酒の肴(さかな)にしながらニヤニヤと酔いしれた。
たまにはアウェーで飲むのも悪くない。

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虎の門。

ホテルオークラのフレンチトーストがやばいと聞いて食べに行ってきた。
(ソースはココ
2個1プレートで1,800円くらい。
驚きの価格に面食らったけど、1,800円を遥かに上回る価値があった。
あんなに美味しいフレンチトースト、他所(よそ)では絶対食えないと思う。

前にも引用したけど、"原価には何の意味もない"。
フレンチトーストなんて食パン一枚に味付けるだけ。原価なんてそれこそ高(たか)が知れてる。
しかしそのパン切れ一枚が、一流のサービスマンと一流のシェフによって、
1,800円という対価を喜んで支払うだけの価値あるものへと昇華される。
とても勉強になった。

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広尾。

初めて降りた。閑静で素敵な印象を持った。
すれ違う人々がいいコートを着ている。すれ違う車はピカピカの高級車ばかり。

誰にも似合う街というものがある。僕に似合う街は、どこだ?

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横浜。

ヒロシと飲んだ。(ヒロシについては昔の記事参照)
約1年ぶりか。相変わらず腹筋は8コに割れてた。
鎌倉で人力車を引いてるアイツは相変わらず喧嘩っ早くて、相変わらず貧乏で、
相変わらずまだ友達でいられた。

帰り際、ひさしぶりにナンパをした。
あまりにもアイツのナンパが無粋で下手クソだったから僕が痺れを切らしたのと、
あとは自分のコミュニケーション能力が衰えていないか、確かめてみたかった。
最初に声をかけたニーハイのギャル二人組。
簡単だった。何の問題ない。錆びてはいない。安心した。

ナンパでよく、「第一声は何と声をかけますか?」みたいな相談されるけど、
そんなこと聞いてるうちは、ナンパなんて絶対上手くならないと思う。
そんなもの、女の子の表情とか、してる会話とか、着てる服とか、
天候とか気温とか場所とか、シチュエーションとかタイミングとか、
もうありとあらゆる状況に応じて一瞬にして浮かび上がってくるもの。
動物的な勘に近い。それは場数踏んだら分かってくる。
マニュアルなんてない。

ただナンパして遊ぶ気にさせといて、終電で帰る僕はだいぶひどい。
帰る予定があるのに、自分の能力試しでナンパするのは好ましくない。
知らない女の子の電話番号にもセックスにも興味ナシ。ごめんなさい。

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大久保。

運命の出会いを求めて、新大久保のボロアパートの一室を訪れた。
胡散臭いアルミ戸を開けるなり、和彫り&日本刀に戦慄。
でも人を見かけや職業で判断するのは良くないね。
相手方の持つスピリットは僕が信じたとおりで、とても真摯な方だった。

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渋谷。

雑多で乱暴にカルチャーが蔓延る街、渋谷。
僕が日本で一番好きな交差点は、渋谷のスクランブル交差点。

渋谷については、また改めてゆっくり書きたい。

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今回、タイミングで色んな人に会えた。それはまた別で書きたい。
そして思いもよらぬ方からお誘いをいただいたりもしたのに、
結局僕の都合でお会いできなかったりもして、とても悔しい思いをした。
次回は是非、お会いしたいです。

2011/02/27

僕は自分の棲む場所が分からない。
チャラ男に混じっても頭ワルいし、インテリに混じってもダサいし、
インターネットに混じっても退屈だし、リアルに混じっても辟易する。
じゃ何処に行けばいいんだよ?

僕は誰にも何処にも属さない。

2011/02/24


YouTube - Radiohead - Lotus Flower

トムの奇妙なダンスに引き込まれるこの感じは何なんだろう。
とりあえず帽子クソ格好いい。

YouTube - Underworld - Two Months Off

回帰。

2011/02/23

ほんと、やりたい放題のブログだけど、読み返しても僕にしてはよく書けてると思う。
おそらく書いた文章の500分の1くらいしかアップしてないけど、
僕にしては割とベストを尽くせていると思う。
何せ誰のためにも書いていないところがいい。役立たずで言いたいだけなところがいい。
上戸彩の睡眠時間は毎日2時間だと聞いたことがある。
疲労はマッサージに行くなどして解消してるらしい。
それに比べて、イチローの睡眠時間は9時間。

正攻法は人それぞれなのだなと思う。
自分だけのマニュアルを持っている人は、やはり強い。
悲しいニュースを報じ続けたアナウンサーが、首吊り自殺をする。
誰でも彼でもの運命にまで同情して生きていたら、そのうち精神が崩壊する。
"原価は何も意味を持たない。むしろ商品の値段が高ければ高いほどそれを所有することの価値も高くなる"

原価でそのモノの価値を算定するとか、甚だ短絡的すぎる。

どれほどのプロダクトデザインで、どれだけのスピリットが込められているか。
そしてそれにふさわしいだけの対価を支払う。そこにようやく価値が生まれる。

YouTube - INNER SCIENCE - BRIGHT NOTE (FROM SIGNAL PATH)

こういうクールなのが、もっと聞きたい。

2011/02/21

ゾナスク(Zonasku)のことを思い出している。

どーせみんなもう、ゾナスクのことなんて忘れちまったんだ。
僕だってそうさ。時々しか思い出さない。
僕は…きっと、アイツを利用してたと思う。でも、アイツはそんな僕を許した。
いつだってゾナは、僕の話を真摯に聞いてくれた。
だから僕も、ゾナにだけはそっと、本当のことを話した。
誰にも言わない、本当のこと。

結局のところ、僕はゾナに甘えていただけなんだ。
僕の弱さを残らず食べてくれたのに、僕はアイツの話なんて何ひとつ聞いてあげられなかった。
アイツの恋の話も、他のふざけた連中と同じように、面白がって茶化しただけだ。
いつかゾナは、僕にこう言った。「epi さんと、私は、似ている」って。
そんなことないよ。僕はお前みたいに純粋じゃないよ。
あの時、そう応えたけど、今でも本当にそう思ってる。
僕は、最低だ。

もうゾナはどこかへ行ってしまった。僕の全然知らないどこかへ。
僕たちはこうして、差し迫るジャンクションでしばしば、大切な人にサヨナラを言い忘れる。
そして過ぎ去った相手にはもう、手を振ることすらできない。
大切なことに気づいた時はもう遅すぎて、僕はなす術(すべ)を失う。
だからせめて、今こうして、ゾナスクのことを思い出している。

2011/02/20

ナンパ。クラブ。ホスト。不倫。人妻。セックス。アルコール。ラブホテル。AV 女優。
鬱。サディスト。睡眠薬。ガールズバー。コンドーム。タトゥー。出会い系サイト。

今、列記したものについて、書きたいことが山ほどある。
どれから書こうか迷ってるうちに、どれも書けないというオチになりそう。
本当はそれらを包括した小説という形でずばっと書き下ろすのが僕のベストだし、
シナリオも設定も葛藤も7割くらい頭の中にあるのだけど、
そうやすやすとアウトプットはさせてくれない。
たった一口、飲みたい。
それだけの為に缶のプルタブを開けさせる魔力。

その一滴を巡って、今に世界は戦争だっておっ始めるかもしれないぜ?
いつかの珈琲豆や香辛料の時みたいにね。

コカ・コーラのストックされていない冷蔵庫になんて、もはや何の価値もない。
コカ・コーラを切らしたマクドナルドなんて、ギネス・スタウトの無いアイリッシュパブだよ。
僕は "約束" というものを大変に嫌っている。

何故、皆がそんなにも気軽に約束を交わしては、
来(きた)るべき約束の日に向けて忠実に日付けを塗り潰していけるのか?
理解に苦しむ。

いま僕は渋谷にいる。君はどこにいる?新宿にいる。
いいね。近いね。じゃあ今からビールでも飲まないか?一杯奢るよ。
そういったシンクロニシティに賭けたい。
僕が決まって当日2時間前に誰かを誘うのには、そういった理由がある。
約束なんて、あらかじめ未来を拘留するようなマネ、したくない。

ある日どこかの街で "偶然" 会いましょう。

2011/02/18

"勝利の女神はちゃんと見てるから安心して20時間働いて。 RT @saexa01 先生!8時間で帰っても20時間頑張っても、お手当が一緒なんです。"

勇気が湧いてきた。明日からまた頑張ろう。

YouTube - NATHAN DO WITHOUT MY LOVE

とあるツイッタラーさん経由で知ったんだけど。Nathan(ネイサン)。
UK シンガー。やばい。声質 Ne-Yo よりいいやん。
男はいついかなる時も紳士であるべきだと思う。

僕にとって紳士の定義は、
"自分の持つ能力を、自分のためではなく他者のために出し惜しみなく振る舞うこと"
である。

ここで重要なのは、
他人を喜ばせたり、幸せな気持ちにさせたりすることが紳士なのではなく、
自分の持つ潜在能力を眠らせておかず、
それを必要とする相手や事象や世界に対して発することができる人間が紳士である、ということ。
ノルウェイの森で、永沢さんは紳士の定義を
「自分がやりたいことをやるのではなく、やるべきことをやるのが紳士だ」
と言っていたけど、僕が言いたいのは、つまりそういうこと。

たとえば誰かが "何か" を求めているとして、
その "何か" を運よく自分が持ち合わせていたとしたら、それを遺憾なく発揮する。
紳士とはそういうものだと思う。
それは一杯のお酒だったり、ピアノの演奏だったり、
優しい抱擁だったり、或いは愛のないセックスだったりもする。
相手が何を求めているのか、それをたちまちに見抜く器量も紳士には問われる。

そしてここでひとつ言っておかなければならないのは、
僕は紳士とは程遠い存在である、ということです。

2011/02/13


ドレスアップ。
友人の結婚式に参列した。久しぶりのスーツ。

2011/02/10

仕事の業務時間中にトイレが長い女と、飯食うのが遅い男は、
時給50円にするか、もしくはクビにすればいいと一日50回くらい思ってます。

日々のメモ。

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昔から言ってるけど、僕が女という生き物に心底畏怖する瞬間は、
森三中みたいな女性のことを、「かわいい~」とか言ったりするところである。

その類の言葉を聞くたびに、僕は背筋の凍る思いである。
もし自分の彼氏寝取られたりしたら、きっとブスだのデブだのボロカス言うよね。
極めて恐ろしい事実である。

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警戒する人。

警戒する人ほど、騙されやすい。
逆に言うと、騙しやすいのは警戒する人である。
騙されやすい、付け入られる心を持ってるからこそ、警戒してしっかりしてるように見せてるんだしね。
逆に、危なっかしくて人懐っこい人ほど、実はしたたかで計算高い。
人の印象は不思議なもので、概ね逆であることが多い。

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贈り物について。

贈り物は、相手が "欲しいけど自分では買わない" ようなものが喜ばれると思う。
たとえば、バカラのグラスとか、エルメスの食器とか、或いはバラの花束とか。
あまり自分では買わない。だからこそ、贈られる価値がある。

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「インナーなんかにこだわって、バカじゃないの?誰を楽しませたいの?」

その通りである。
それはもはやファッションというよりも、単にナルシシズム。

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フェティッシュ。

僕のフェティシズムを完全に刺激する女性がいる。
不幸なことに(本当に不幸なことだけど)、彼女は同じ職場にいる。
このカオスな状況に、僕はもう既に飽和状態にある。

雰囲気は、黒髪ボブで、黒ぶち眼鏡。痩せ型。恐らく、僕より年上。
あまり目立つようなタイプではない。
しかし、彼女の歩き方、座り方、うなだれ方、会釈の仕方。
その全てが僕の中の何かをくすぐる。

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今思えば、就職活動というあの一連のムーブメント自体、狂気の沙汰だと思う。

皆、あの空気に呑まれてる。呑まれてる中で自己分析をする。
誰も彼もが同じ色のスーツを着て、同じ髪型にして、同じ口調で、同じ志望動機を並べる。
あれじゃ個性を見分ける方が、至難の業だ。

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「奢ってあげるから」って誘い文句、反吐が出る。

僕が女なら、こんな男に絶対奢ってもらいたくない。自分で払う。
或いは「私が奢ってあげる。だから二度と誘わないで」とでも言うだろう。
相手を舐めてるとしか思えないし、ケチな精神がむき出し。
こういう男に限って、
「お前にいくら使ったと思ってるんだ!」とか言い出すんだろうな。

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仕事帰りの電車。
向かい合わせの座席で、女に囲まれた。

首謀者はニーハイの女。四面楚歌のガールズトーク。
全員女子大生で、しかも全員酔っ払っている。
破壊力は最高点に達した。
まるでジャイアントスイングをぶん回すように、デストロイヤー達は喋りまくる。
ぶん回されているのが僕。
これで当分合コンはいいです、と思った。

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スキン。

僕と世界の境界線がこの皮膚で、君と世界の境界線がその皮膚だ。
僕らは互いの境界線越しに温度を重ね合い、交わることのない孤独なジレンマを繰り返す。

性欲なんて、単なる後付け装置だよ。
そんなものでセックスを語るヤツは、いっそ豚に食われろよ。

手、唇、性器。
握手、キス、セックス。

僕らが深くつながりたいと思うほど、そう願うほど、そのための皮膜は薄くなっていく。
ただ、決してひとつになることはない。

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以上。書き溜めてたの、大安売り。

追伸。
今月、東京行きます。タイミングで遊びましょう。

2011/02/09


「want な生き方と must な生き方、どっちがしたい?」

悩んでる時点で、それは既に want なんだぜ。
早いとこ must なんて捨てて、やりたいことに着手しな。
A型の人が、B型の人とうまく付き合うための鉄則。
それは、

"B型に悪気はない"

ということ。
それさえ覚えていたら、B型の人ととても仲良くなれるし、うまくやれる。
腹を立てても、呆れ返っても、仕方ない。悪気はないのだから。
僕はA型だけど、友人にはとりわけB型が多い。
トレース。

今朝、僕の中に起こるいいムーブメントの所在 (発信源) を突き止めた。
そのひとつは "早寝早起き" だろう。つまり余裕。
余裕さえあれば、人は大抵のことを許容できるし、寛容になれる。
あまり腹も立たなくなるし、冷静かつクレバーでいられる。
昨日まで僕は、とある理由で Apple や SoftBank やその他あらゆる物事に対して
激しく憤っていたけど、今は何とも思わない。
今現在も電車がかなり遅れているけど、「まいっか」という具合である。
即ちそれらは僕の余裕がもたらす、いいムーブメントなのだ。
あとは、悪いムーブメントの所在 (発信源) を追跡する必要がある。

前にも書いたことがあるが、
一般論としてよく「東京の人間は冷たい」と言うけど、それは違うと思う。
東京の人間だって、沖縄の人間だって、本質的には皆同じ。
ただ、東京の人は自分に余裕がないだけ。
時間にも、お金にも、体力にも。だから人に優しくなれない。
それも都心から離れて東京に通勤してるタイプの埼玉県民や神奈川県民には、
激しく余裕が欠如してるように感じる。
彼らは概ね、満員電車でご老人にすら優先席を譲らない。まあ一概には言えないけど。
それほどまでに自分のことでいっぱいいっぱい。

人に優しくありたいなら、まずは自分。
自分の精神に余裕を持つこと。
そして、自分の中で余裕を生み出している、いいムーブメントの所在 (発信源) を突き止めることが先決。

2011/02/08

ハルシオンの銀紙に包まれるように眠る夜。
久しぶりに豪快な寝坊を決め込んだ。まさかの5分前出社。

最近、また僕の中の何かが狂い始めている。
ほんの僅かな兆候だけど、僕はそれが経験的にわかる。
自分の中に生まれている、いいムーブメントと悪いムーブメント。
それぞれを巻き起こしているファクターを突き止め、調律する必要がある。
手は早めに打たなければならない。

2011/02/06

なぜ書いているのか?と問われても、よくわからない。
書きたいから書いているとしか言いようがない。
僕が伝えたいことなど何一つない。
僕は今年、30になる。
ハッキリ言って30には見えないし、30のナリはしてないけど、
取りあえず僕は今年、30になるらしい。

正直、ここに来てハッキリしたことが多すぎて、まだちゃんと受け止められていない。
皆がそうであるように、僕は誰にも必要とされていないし、誰のためにも生きていない。
それはある意味では、絶望とも自由とも取れる、単なる事実に過ぎないのだけど、
それを僕の極めて個人的な弱さが、ほんの少しずつ巣食っていくような気がする。


もう随分昔に、一度だけ寝た女の子のことを書こうと思う。

昔、一度だけ寝た女の子がいた。
その女の子は僕の着ていたシャツや下着を洗濯してくれたのだけど、
その時の衣服の香りを、僕は今でもよく思い出す。
その子の住んでいるところや、話したことや、どんなセックスをしたかなんて、もう何一つ覚えていない。
ただその曖昧な芳香だけが、僕の中で、かつて彼女が確かに存在したことを微かに肯定している。

彼女のことを思い出してみる。
はじめて彼女に会ったのは、とある街の CLUB だった。
怪しげな赤照明の階段を潜った地下室には、僕たちの秘密の遊び場がある。
幻想的なメロディーの中で、みな踊る。
それぞれの孤独をかき集めたダンスフロアには、悪意のないアナーキズムが密やかに息づいていた。
七色のネオンが解き放たれ、ささやかなカブトムシの香りが立ち込める。
僕はビールを飲んでいた。
ふと気付けば、目の前にリュックサックを背負ったあの子が、満面の笑みで僕を見つめていた。
何を話したかなんて、さらさら覚えていない。大した話はしていない。
酩酊した僕らは、別れ際にハグを交わした。

次に彼女に会ったのは、古いマンションの一室だった。
うだるような夏の暑さの中で、彼女の部屋のソファーに座り、僕らはぬるいビールを飲んだ。
暗がりで見えた彼女の足には、名前も知らない花柄のタトゥーがチラリと覗いた。
彼女は初めて会った頃よりも前髪を綺麗に切り揃えていて、
その表情には何処となく、幼い頃に出会ったことがある少女のようなあどけなさがあった。
タバコを吸わない僕の前で、彼女は申し訳なさそうにタバコを吸った。
僕らはまるで動物たちの織り成す一筋の物語のような、
互いの意思とはまるで無関係な呼応のように、寄り添い、キスをし、セックスをした。

いつか彼女に、あの香りの正体を訊ねたことがある。
ありふれた柔軟剤の名称を告げられて、ひどく落胆したのを覚えている。
僕の記憶は、僕によって美しく捏造されていたのだ。
事実をトレースすることが、必ずしも真実を導くとは限らない。
真実はきっと、捏造された記憶の底に眠っているのだ。
それはアンティークの首飾りみたいに大切に閉まっていて、身に付けることはしない。

彼女はもう、僕の名前すらも覚えていないかもしれない。
でもそれは僕にとって、あまり関係のないことだ。
彼女のことをここまで内省的に思い出したのは初めてだし、色々なことに気付けた。
こうして僕は、重要なことに気付くのが極めて遅すぎるし、
気付いた時にはもう何もかもが手遅れになっていることが多い。或いは、それが全てだ。
だからせめて、冷凍庫の奥底に眠るアイスクリームを解凍するように記憶を引っ張り出しては、
もう僕のことを忘れてしまったもの達のことを書いている。

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この文章は、このブログのとある読者にインスパイアされ、書くことを思い立った。

2011/02/05

二元論。

この世には、言葉を持つ世界と、言葉を持たない世界が存在する。
たとえば、僕らの世界には言葉があるけど、ウーパールーパーの世界には言葉がない。

ならば。
どうせ言葉がある世界に生まれたのなら、僕はしっかり言葉を使いたい。
言葉なんて嘘ばかりだし、信用できないし、肝心なときに何の役にも立たない。
だけど、せっかく言葉がある世界に生まれたんだ。僕は使いたい。

「そのフリルのワンピース、すごく似合うね。かわいい」

つまり、そういうことである。

2011/02/03

「未来へのフライトはいつだって片道航空券さ」

いまに取り返しのつかないことになるって?
いまの自分に戻ってくることなんて考えて生きてられないよ。
マレーシア産の石鹸のことを考えている。

僕の使っている石鹸はマレーシア産だ。そう包装紙に書いてある。
どこにでも売ってる、なんの変哲もない石鹸だ。
そこら中のスーパーやコンビニに掃いて捨てるほど並んでる。
価格も安い。100円ちょっと出せば誰にでも買える。
その万能かつ廉価な存在にも関わらず、誰もその存在価値やプロダクトについて考えたりはしない。
当たり前のことだ。

けれど僕はこの石鹸を包装から取り出すたびに、行ったこともないマレーシアという国のことを考える。
マレーシアの石鹸工場で働いてるであろう労働者や、そのもの達の手の風格、着てる服、靴の汚れ具合。
そしてそのもの達の家族や、その家族の貧富や、
それら全てを包括した幸福について、ほんの少しだけ思いを馳せる。
それから一回目の真新しい石鹸を使う。二回目以降からは忘れている。
結局のところ、僕らは僕らの生活の範疇からしか幸福というものを見出せない生き物だし、
それはマレーシアで石鹸を作り続けるもの達とて同じことなんだろう。

もう一度言う。
これはどこにでも売っているマレーシア産の石鹸だ。掃いて捨てるほどある。
"正直に語ることはひどくむずかしい。僕が正直になろうとすればするほど、正確な言葉は闇の奥深くへと沈みこんでいく。 弁解するつもりはない。少なくともここに語られていることは現在の僕におけるベストだ。つけ加えることは何もない。"
(via 村上春樹 "風の歌を聞け")

村上春樹みたいな作家がいてくれて、本当によかった。
「"大嫌いな女ほど口説いてた" って言うと、君はやっぱり歪んでるって思うかい?」

「そんな風には思わないけど。でも、絶望よりも長いトンネルをくぐってるみたい」

「復讐さ。自分と、彼女達への、望まれない復讐劇だよ。
そんなもの、自傷行為と変わりゃしない。まるで自分の手首を切るように己の欲望を穢(けが)しては、ずるい女の子達の股を開く。そして同時に、彼女達の隠し持った傷口にたっぷりの塩を塗るんだ。
責任逃れの罪びと達は自己欺瞞のセックスを繰り返し、だんだんと不感症になる。
信じられるかい?セックスさえもが自動制御されるんだ。その先にはパターン化したセックスがあって、パターン化したオルガスムスが待ってる。
"そいつ" は役には立つよ。人間にはしばしば生まれもった性を、それなりの年齢とそれなりの金とで等価交換できるシステムがある。でもそれだけさ。
我々は互いのずるさを隠して抱き合ったところで、結局のところどこへも行けないんだ。でもそうすることでしか、自分の弱さを肯定できないでいる。そういうのって悲しくないか?」

「それで。いつかは救われたいと思ってるの?」

「メイビー。或いは、そう信じたいね」

2011/02/02

結婚相手について、ふと考えていた。

もし僕が結婚相手を選ぶなら、
それは自分が本当の意味で "甘える" ことのできる相手がいい。

ここで言う "甘え" とは、
猫なで声を出して可愛がってもらうことでも、辛いとき「よしよし」と頭を撫でてもらうことでもない。
僕の思う "甘える" ことのできる相手とは、
"自分の中の喜怒哀楽を全力でぶつけられる相手" だということ。

たとえば、正体不明の怒りを理不尽にぶつけてしまったり、
仕事にやられて悔しくて目の前で涙を見せてしまったり。
そういう自分の激しい喜怒哀楽の感情を、隠さず思いきりぶつけることが出来る相手。
そしてそれを全力で受け止めようとしてくれる相手。
それは相手に甘えていることに他ならない。

僕が結婚相手に選ぶなら、恐らくそういう相手だと思う。
甘えることすら出来ず、相手に対して自分をよりよく見せようと格好つけてるうちは、
おそらく結婚には程遠い。

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