ふと思い出した話なんだけど、
僕がまだハタチの頃に、オープンテラスのカフェで共に働いていた友人と、久しぶりに再会したときのこと。
とあるオーセンティックなバーで、僕達は乾杯をした。
僕がバーテンダーの仕事を教えた仲間なんだけど、彼と派手に酔っ払っていた。
仕事の話、女の話、音楽の話。古い昔話に興じていた。
その時、確か三杯目だった。僕がマスターに、「甘くて、でもキレのあるヤツ」とオーダーしたと記憶している。
角ばったバロンのシェーカーを、ねじれるような動きで鮮やかに三段振りする。
丸氷を入れたオールド・ファッションド・グラスに注がれたその時のカクテルの名前が、オールド・パルだった。
レシピはスタンダードを改良したオリジナルで、甘めに仕上げられていた。注文どおりだった。
それから、しばらく月日が経って、もう忘れた頃。僕は、ふと思い出した。
そう言えば、あの時のカクテル…ひょっとして。思い立って調べてみたら、やっぱりそうだった。僕の勘は当たった。
オールド・パル。カクテルの意味は、「懐かしい友人」。
本当にいいバーテンダーは、誰も気が付かないようなところで、気の利いたことをする。これがプロの仕事。流石だと思った。
そして、自分もかつて同じ職に就いていたことを思い出した。
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