「いい男と、幸せになれる男は、違うよね」
いつかのガールフレンドは僕にそう言った。
当時のそれは笑い話になって通り過ぎた一言だったが、
あの日の彼女の言葉が何を仄めかすのか、なぜ僕にそうつぶやいたのか、
今ならその意味が何となくわかる気がする。
不幸なことに、僕はいつもこうして後々になってから肝心なことに気付くし、
もうその時それらは既に失われていて、手遅れになっていることが多い。
ふと彼女のことを思い出そうとしてみる。
キスをした時に感じるタバコの香りと、舌に開けたピアスが触れる愛撫。
今はもう五感くらいでしか、彼女の記憶をたぐり寄せられない。
そう思うと、たまらなく悲しい気持ちになる。
そう。いつかの時代、僕らは確かに友達だった。
エピチャン
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