エピチャン

2011/11/22

そうだ。僕たちは誰しもが千の夜を騙し続ける幸福な罪びとだ。
誰もが自分自身についた千の嘘をあばけずに、行き場のない焼却炉へと放り込んでいるよ。
涙を汲み忘れたフリをして笑顔を作る。誰も嘘を咎めない。

大脳皮質の表面でひとつ、またひとつと細胞が死ぬ音がするよ。
傷ついていくばかりの皮膜の途上で手をつないでいるよ。
ひとつになれるくらいならきっと、はじめからこの手のひらに接着剤がついていただろう。
我々はどこまで行っても、この皮膚の下にあるワインの澱(おり)のような孤独と生涯一蓮托生なのだ。

君の心臓を引っこ抜くわけにはいかない。
耳を澄ませば、それぞれの心臓が鳴りやまずに重なり合いながら、互いのベクトルをすれ違う。
ふたつの心音は不揃いで、スピードだって伸縮だって全然違う。
心臓に触れられない互いの隔たりをポジティブな人々は世界と名づけ、
そこで運良くめぐり会えた宙ぶらりんの僕らはセックスをする。今日が終わるその前に。

あと何秒間、この細胞が死にゆくのを見届けられるのだろう?
あと何秒間、この皮膜の途上で互いに生きていることを感じられるのだろう?

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